よもやまばなし
疣水(いぼみず)
その尼僧には、ひとつの悩みがありました。それは、手首のまわりと顔に疣(いぼ)が多くあったことで、とくに顔の疣は鼻のわきにあり、豆粒犬でした。尼僧は村々を托鉢にまわる時は笠で顔をおおい、衣の袖のまくれを気にしていました。
ところが不思議なことが起きました。悩みの疣が半年と経たぬうちにきれいに消えたのでした。 村人はいぶ かしく思い尼僧に恐る恐るその理由を尋ねました。尼僧は微笑みながら、釈迦堂の裏に湧く清水で毎日身を清め行を練けたことを話しました。
この霊験を知った村人は「疣とりの水」と名付け、善男善女の病苦を退け心労を払う霊泉の恩恵を尊び、その名も近在に知れわたり信者がひきもきらなかったという 事です。
大正二年には、ラジウムエマナチオンが含有されていることがわかり、薬効泉であることが証明されました。
佐梨川の美しい渓流にかけられた吊り橋です。橋を渡つていると鳴き出す岩があつたといわれ、村人たちの不思讁のひとつとして、言い伝えられています。昔はこの橋の下に両岸から大きな岩がせり出して淵を形成 していましたが、大雨の時に流れをさえぎることから取り除かれ、今では穏やかなせせらぎとなっています。
山のふもとにある稲荷様の社から山頂に向けて稲藁を配置し、夜を待って点火し ます。白雪に覆われた山々が、燃え上がる藁火のあかりに浮かび上がり、幻想的な雰囲気の中で百八灯のハヤシを合唱します。